住民参加型プロジェクトで持続可能な地域交通を目指す、「多度津町自分ごと化会議」
人材育成
香川県多度津町

- 高齢者向け地域交通サービスの財源確保
- ボランティア運転手の安定的な確保
- 地域公共交通の持続可能性
取り組みの背景
香川県多度津町では、タクシーチケットを交付する「高齢者福祉タクシー事業」等の行政による移動支援や住民ボランティアによる移動サービス「チョイ来た事業」などが行われていますが、運転手不足や利用者の固定化、サービスの継続性といった課題を抱えています。さらに、高齢化やコミュニティの希薄化が進む中、新たな対応策が求められていました。
このような状況を踏まえ、当社は国土交通省「共創・MaaS実証プロジェクト」を活用し、一般社団法人構想日本との協働のもと、約1年にわたる住民参加型プロジェクトを企画。町民や地元事業者の意見を取り入れながら、持続可能な地域交通の実現に向けた新しい仕組みづくりと地域交通事業を牽引できる人材の育成を推進してきました。
香川県多度津町との取り組みについて
多度津町とは約1年間段階を踏んでプロジェクトを実施。令和5年度には「地域交通コーディネーター育成事業」と題し、地域公共交通の改善・運営を行うことができる自治体職員への研修プログラムを実施してきました。
令和6年度は「多度津町自分ごと化会議」として、地域交通やまちづくりを自分ごと化して考え提案できる人材の育成を目指し、主に町民向けのプログラムを実施してきました。特徴として、従来の行政主催の会議でよく見られる公募や推薦による人選とは異なり、無作為選出で幅広い年代・立場の住民の参画を実現。選ばれた23歳から79歳までの町民35名が参加しています。
年度をまたいで計6回(2・4回ずつ)開催されたプログラムでは、既存の移動支援サービスの課題整理から、デマンド交通や公共ライドシェアなどの新たな交通手段の検討まで、活発な議論が展開されました。
特に、免許返納後の移動手段や、病気・怪我の際の対応、子育て世代の負担軽減、外国人の移動手段など、多様な視点からの意見が寄せられ、地域交通が単なる移動手段の確保にとどまらない、地域コミュニティのあり方そのものに関わる重要なテーマであることが確認されました。
最終回の様子と参加者コメント
2024年10月14日に開催された最終回では、これまでの議論を集約しつつ、新しい地域交通のあり方について活発な意見交換が行われました。「自分ごと」として地域交通を考える意識が育まれ、「最初は実感が沸かなかった」という参加者も、回を重ねるごとに具体的な提案を行うようになりました。
特に印象的だったのは、地域全体での共創を見据えた次のようなアイデアです。
・若い世代の参画を促すアイデアとして、「子供の世話や食事提供など、学童保育的な環境づくり」という提案 ・多度津自動車学校の閑散期における車両や教官の活用 ・スーパーなど商業施設との連携
参加者からの声 「地域交通に関する関心が高まった。町民として積極的にサービスを利用することでまちと関わっていきたい。」 「誰かのため、まちのためになることがしたいと思っていた。広報で情報を知るだけだったが、自分の意見を伝える場に参加できてよかった。」 「初めての試みでとてもいい取り組みだったので、継続していって欲しい。地域交通だけでなく、これを皮切りに他の行政課題にも活かして欲しい。」
多度津町職員の声 「昨年度は多度津の現状を整理し、今年度に住民の生の声を聞けたのが大きかった。無作為に選ばれた住民の方々とワークショップを開催するのは初の試みだったが、建設的で前向きで貴重な会議になった。住民の方々が感じている交通の課題感を職員が知り、地元交通事業者との関係性を築き、自治体職員として地域交通を引っ張っていくだけの知識を得られたと感じている。」
会議では、地域交通の課題解決にとどまらず、コミュニティの希薄化や人材不足など、まちの持続可能性に関わる様々な課題も浮き彫りになりました。当社は引き続き、地域交通を軸としながら、「暮らし続けたいまちをつくる」というミッションのもと、多度津町をはじめとする地方自治体の持続可能な発展に貢献してまいります。




