「過疎地ライドシェア」のススメ 〜GovTech企業が目指す日本版ライドシェア〜

パブリックテクノロジーズはライドシェアに取り組む日本の企業です
2023年8月は、日本で「ライドシェア」という言葉が急速に広がりを見せた月となりました。 しかし、「そもそもライドシェアとは何なのかよくわからない」「なぜライドシェアを解禁する必要があるの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
ライドシェアの意味するものは人によって違いがあるものの、「車での移動をシェアすること」であることは共通しています。
よく知られているカーシェアは車をシェアリングすることですが、そこから一歩進んで、同じ場所に行きたい人たちが目的地までの移動(=ライド)そのものを共有(=シェアリング)する仕組みということができます。
ライドシェアはタクシーと比較されることが多くあります。タクシーでは専用の車と専門のドライバーが一定の地域内だけを運行しているのに対して、ライドシェアでは車・ドライバー・目的地を自由に組み合わせて、柔軟に運行することができるという違いがあります。タクシーが営業許可によってドライバーの質を担保している一方で、ライドシェアでは利用者の方がドライバーを評価することで質を担保しているという違いもあります。
現在タクシー業界は、慢性的な「ドライバー不足」という問題に悩まされているため、「タクシーを呼んでも来ない」「何時間も待たされてしまう」というケースが多く起きてしまっています。
そして、新しい移動のかたちであるライドシェアの実現に向けた規制緩和を求める声が上がり始めているのです。
海外では、「Uber Eats」で有名なUber社がライドシェア事業を世界的に展開するなど、ライドシェアが交通手段の1つとして幅広く普及しています。
私たちは、日本でライドシェア解禁に向けた議論が盛り上がりを見せる中、今後の日本で必要となるライドシェアの形を模索し、「いつでも、どこでも、どこへでも行ける」交通を目指して取組を進めています。
日本のライドシェアの現状と課題
「ライドシェア解禁」という言葉からも分かるように、現在の日本ではライドシェアは禁止されています。「道路運送法」という法律によって、タクシー事業者やバス事業者などの決められた事業者以外は、乗客を乗せて目的地に届けるというサービスを提供することができないからです。他にも、「道路交通法」という法律によって、専用の免許を取得した人以外はこうしたサービスのドライバーとなることができません。このようなルールに沿っていないサービスは「白タク」と呼ばれ、処罰の対象になってしまいます。
このような規制は、かつて交通事故が非常に多く発生していた時代には、乗客の安全を確保するために必要なものでした。しかし、交通事故がピークを迎えた平成初期と比べ、現在の交通事故の数は3分の1以下、死者数は4分の1以下に減少しています。
車に関する技術の進歩で交通の安全性が高まる中、タクシー業界の反対などにより規制緩和が進んでいないために、かえってタクシー不足、ドライバー不足などの新しい課題が発生してしまっているのです。
交通サービスの供給不足という課題は、都心部だけの問題ではありません。地方部では、人口減少により路線バスを廃止・減便するしかない状況に追い込まれていて、交通サービス不足は深刻な問題になっています。こうした地域では、大手タクシー事業者の撤退も進んでいて、住民の方々の足がどんどん奪われてしまっているのです。
路線バスの維持が難しくなった自治体の中には、予約に応じて公共交通を運行する「オンデマンド交通」という仕組みを導入しているところもありますが、車やドライバーの確保という点でバス事業者・タクシー事業者に頼らざるを得ないため、こうした事業者の賛成が得られなかったり、そもそも協力してくれる事業者がいない自治体もあります。
また、現在の規制の中で実現できるライドシェアに近い制度として、自治体やNPOなどがボランティアの協力で運営する相乗りのようなサービスも存在しますが、運賃の設定や運行できる地域に制限がある上に、善意によって成り立っている制度であるため、安定して乗客のニーズに応えることが難しいという問題があります。
過疎地ライドシェア パブリックテクノロジーズが最初に目指す「日本型ライドシェア」の形
このように、日本でのライドシェアの実現には様々なハードルがあります。しかし、このままの状態が続いてしまえば、「いつでも、どこでも、どこへでも行ける」という交通環境が維持できなくなると私たちは考えています。
私たちがすぐにでも日本に導入すべきだと考えているライドシェアの形が、「過疎地ライドシェア」です。
過疎地とは、簡単に言えば人口が急激に減少している地域のことです。過疎地に該当する地域の数は年々増え続けており、2022年には過疎地である自治体の数が史上初めて全国の半数を超えました。地方の衰退が深刻なものとなる中で、私たちは、日本に住む人々の足を守るためにも、車の運転が難しくなった高齢者の方々や、公共交通へのアクセスが難しい地域に住んでいる方々に向けて、一刻も早く交通サービスを提供する必要があると考えています。
深刻化する過疎地での交通問題を解消するためには、現在の規制の中でも実現できるボランティアサービスを速やかに導入することはもちろん必要ですが、生活のために不可欠なインフラである交通サービスをボランティア活動によって提供し続けることには限界があります。
すでに公共交通の維持が難しくなっている過疎地において、「いつでも、どこでも、どこへでも行ける」という当たり前の交通環境を維持し、住民の方々のくらしを守るためには、多くの人がドライバーとなって交通サービスを提供することができる仕組みであるライドシェアを導入していく必要があるのです。
「ライドシェア」という言葉からは、「自由化」「規制緩和」の側面を強く感じることは確かですが、公共交通の維持が難しくなっている過疎地において、赤字が続く鉄道や路線バスに代わる新しい公共交通の形を作るためにもライドシェアが必要不可欠です。将来的には、病院・介護施設への送迎やコミュニティバス、スクールバスなどにも活用することで、自治体の財政負担を軽減しつつ、公共交通の充実を目指していくことができるのではないかと考えられます。
パブリックテクノロジーズでは、「オンデマンド交通」から「ボランティア運送」、さらには「ライドシェア」に至るまで、どのような形の交通サービスにも対応できるAI配車システムを開発しています。AIを活用したこのシステムでは、利用予約と車・ドライバーのリソースを最適な形でマッチングさせ、少ないリソースで最大限の交通サービスを提供することができます。
私たちは、こうした先端技術を活用した「過疎地ライドシェア」を実現することにより、地方に住む方々の「足」を守るための取組を進めていきます。